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【レビュー】神作確定!恐怖と驚愕のストーリーに震えた『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』初見プレイした感想と物語の真相を徹底考察

ゲームレビュー

今回は、先日初見プレイを終えたSteamのホラーゲーム『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』のプレイレビューをしていきます。2年越しに決断して購入したゲーミングPCでのライブ配信第1回目という記念すべき配信に選んだ甲斐のあった、非常に素晴らしい作品でした。

今回はそんな『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』の詳細とゲーム内容、物語の考察などを含めて解説していきたいと思います。なお、ネタバレ部分については未プレイの場合展開がわかってしまう内容となりますので、自己判断でお願いします。

『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』の概要

まずは簡単にゲームの概要を紹介します。

《『ウツロマユ – Hollow Cocoon -』とは》

1980年代の日本を舞台にした、一人称視点のホラーアドベンチャーゲームです。

プレイヤーは祖母危篤の報を受け、十数年ぶりに母の故郷を訪れた男子大学生「陣場湊(じんばみなと)」となり、襲いかかる化物から身を隠しつつ、様々な場所を探索し、謎を解き、資料を収集してゆくことによって、隠された恐ろしい真実に迫っていきます。

《ストーリー》

――198X年

親元を離れ都会で下宿生活を送る男子大学生、陣場湊。
ある夜、湊は父栄治から母方の祖母である深山絹が危篤だとの知らせを受け、
母の生家がある山深い村「一ノ瀬」へと向かった。

幼い頃会ったきり、十年以上疎遠だった祖母。
実の娘である亡き母の葬儀にすら顔を出さなかった祖母に
湊は以前から嫌悪感を抱いていた。

田舎道を進むバスに揺られながら
たった一度祖母と話した時のことを思い出す。

「――お蚕様はね
 たとえ繭を出られても
 もう口はないし 飛ぶこともできない
 卵を産んで死んでしまうの」

「人がそういう虫にしてしまったのよ」

赤く染まる空と山の影が迫る夕暮れ。
湊はこの地で
窒息するような恐怖と隠された真実を知ることになる。

引用元:Steam公式ページ

このゲームの特筆すべき部分としては、開発元の『NAYUTA STUDIO』です。どういうことかというと、このゲームは2名のクリエイターのみの手で作成されたとのこと。これだけ聞くと『少ない人数で頑張ったインディーズ作品か』と思いがちですが、実際にプレイしてみるとその完成度と物語の深さに驚嘆すると思います。

実際、僕自身はこの事実を初見プレイ完了後に知ったのですが、ゲームの内容としてはとても二人だけの力で作成したと思えないほど緻密で美しく、それでいて懐かしいような艶やかさがあり、同時に恐怖と驚愕に包まれ、切なさと哀愁漂う作品となっていると思います。

ゲームのプレイ内容としては、探索型ホラーゲームとなっており、僕がプレイしてきたゲームでいうと『リマザードシリーズ』や『ソングオブホラー』に近い感覚を覚え、非常に素晴らしい作品に仕上がっていると思います。実際のゲーム自体は、探索する→謎解きして進む→化け物が追いかけてくる→逃げる→探索する・・・という繰り返しなので、ゲームシステム自体は非常にシンプルです。

しかし、この作品の最大の特徴は『物語の奥深さ』と『プレイヤーの解釈の自由度』という点が非常に優れている点だと考えます。ゆえに、このゲームを考察していく上ではどうしてもネタバレ要素を含んでしまう点ご了承ください。それでは、このゲームの物語について考察を交えながら、その素晴らしさを解説していきます。まだ核心のネタバレはしないように書きますのでご安心ください。

物語の考察(ネタバレしない程度)

ここからは、ゲームを振り返って物語風にあらすじを紹介していこうと思います。前半はネタバレしないように紹介し、後半ではネタバレありの独自考察を紹介しますので、ぜひご覧ください。

始まりは父からの電話

※プレイ画面キャプチャーより引用

父からの電話を受けて、一ノ瀬へでバスを降りた湊が見たのは、過疎が進んだ田舎でした。季節は紅葉も終わりかけた11月。木々がカサカサと揺れる風が今にも壊してしまいそうな粗末なトタンを張り合わせたバス停が目の前にありました。

道行く人影は見えず、どの建物も人は住んでいない様子で静まり返った一帯には、夕焼けのオレンジ色と違和感を覚えるほどの静寂が広がっています。ほどなくして祖母の家に着くとそこには『深山』という表札が掲げられており、確かに遠い昔この家に来たことがあるような気がした湊は、預かっていた鍵で祖母宅の中へ入ります。

当然のことながら家の中には誰もおらず、仏間には祖父を含めた家族の遺影が飾られていました。そこに一つだけ若い女の子の遺影が足元に落ちていることに気づきます。よく見てみると非常に綺麗な女性で、湊は母親によく似た顔の女性だなと思いました。

※プレイ画面キャプチャーより引用

湊の祖父である佐一(さいち)と湊の母親の結(ゆい)についてはすでに故人であることが冒頭で示されます。祖父は事故死、母親は理由はわからないものの自殺であるということが語られます。湊が少し休もうと炬燵で昼寝をしている際に見た夢で、祖父らしき人は井戸をのぞき込んでおり、母親は踏切に立ち入ってその後電車に撥ねられるという描写があるため、おそらくそれがそれぞれの死因ではないかと思われます。(祖父は転落による事故死)

そうこうしていると、裏口の方から何やら物音がしたことに気づきます。引き戸を開けて出てみると、そこには無残にも食い散らされた鶏の死骸が落ちていました。驚きつつも、背後で電話が鳴っていることに気づいた湊は家の中に戻ろうとしますが、郵便受けに入っていた手紙を手に取りました。

そこには、村長から祖母である深山絹(みやま きぬ)に宛てた手紙が書かれていました。内容を読んでみると、祖母の自宅がある周辺一帯はダム建設の話が持ち上がっており、役場から立ち退きを要請されている状況であることがわかりました。しかし、その要請に絹は頑なに反対しており、役場の人間が村長に対して、絹を説得してほしいと相談したことが書かれています。

政治的な流れに逆らうと、何をされるかわからないと村長は絹を説得したかったようですが、その手紙は郵便受けに入ったままであることを考えると、絹はおそらく読んでいなかったのではないかと考えられます。

手紙を読み終えると、電話の受話器を取る湊。出てみるとそれは父の声でした。危篤だと聞かされていた祖母の絹の様子におかしなところがあると父が言います。それは、庭先で倒れて搬送されたため、直近で発症していた脳腫瘍による病気が問題と思われていましたが、医師の勧めで転院した病院で詳しく調べたところ、なんと絹の首には何者かによって絞められた跡が見つかったとのこと。

※プレイ画面キャプチャーより引用

役場との対立と父からの電話で不穏な空気を感じながら、湊はひどく喉が渇いた気がして台所へ向かいます。蛇口をひねって水を茶碗に注ぎ一口で飲み干すと、擦りガラスの向こうに白い人影が横切りました。慌てて外を見に行くと、そこには化け物の姿があり、とっさに家の中に逃げ込んだ湊は化け物の足音に気を配りながら、何とかその得体のしれないものから逃げて、ある部屋に逃げ込みます。

※プレイ画面キャプチャーより引用

祖母姉妹と昔話

※プレイ画面キャプチャーより引用

母屋のある部屋に逃げ込んだ湊はそこから外へ出てみると大きな蔵を発見します。中には誇りを被った書物や掛け軸などが散乱しており、湿った空気が流れていました。一通りあたりを調べていると、湊の父親である栄治(えいじ)が祖父の佐一に宛てた手紙を発見します。

そこには、息子である湊がのどの渇きを訴えることが多く気にしているということが書かれていました。湊は小さいころからのどの渇きを訴え、母親である結も同じようにしきりに喉が渇くと言っていたことを栄治がつづっています。結がなくなる前に聞いた話で、喉が渇く性分は父親譲りであると結が話していたため、結から詳細を聞けなかった点について、結の父である佐一に教えを乞うため手紙を書いたのでした。

※プレイ画面キャプチャーより引用

蔵は2階建てになってり、階段を上ったところの格子から月明かりが差し込んでおり、そこには『繭姫伝説』と書かれた赤い本が置いてあることに湊は気付きます。中身をよく読んでみると、昔読み聞かされたおとぎ話のようであることに湊は気付き、それは子供心に非常に怖い印象でその夜は眠れなかったと話しています。また、このあたりで祖母の絹の姉が『綾乃』という名前であることが明かされます。

昔々あるところに
繭姫というたいそう美しい姫がおりました。

春の月
繭姫の妹はその美しさを妬んで
繭姫を獅子の棲む恐ろしい山につれてゆき、
置き去りにしてしまいました。
しかしその夜に繭姫は、屋敷に帰っておりました。

夏の月
妹は繭姫の手を引いて
鷹の群れる暗い山につれてゆき、
置き去りにしてしまいました。
しかしその夜に繭姫は、屋敷に帰っておりました。

秋の月
いよいよ我慢できなくなった妹は
繭姫を船に乗せ、遠くの海に流してしまいました。
しかしその夜に繭姫は、屋敷に帰っておりました。

冬の月
恐ろしくなった妹は、繭姫の手を引いて
庭に掘った大穴に、生き埋めにしてしまいました。
しかしその夜に繭姫は帰らず
不安になった妹が庭の大穴を掘り返すと、そこに繭姫の姿はなく
穴の開いた大きな繭と白い小虫ばかりでした。

本編『繭姫伝説』ファイルより引用

蔵に散らばった掛け軸の謎解きをすると隠し扉に通じる道が開けます。その隠し扉を抜けると牢屋のような場所があり、その先には絹と綾乃が幼少期に暮らしていたと思われる、深山家の大きな屋敷がありました。ここでは数々の真実が明らかになっていきます。

屋敷で語られる過去

蔵を抜けて隠し扉を通ると、朽ち果てた深山邸が湊の前に鎮座しています。

※プレイ画面キャプチャーより引用

この屋敷では、かつて絹と綾乃が過ごしていた幼少期から、絹が佐一と結婚するまでのことが主に描かれており、絹と綾乃と佐一という奇妙な三角関係について深堀されていきます。

また、すでに亡くなってしまった湊の母親、結の半生についても触れられており、結の母親である絹と確執があったこと、その確執の原因が語られていくこととなります。さらには、それが湊にとって思いもよらない真実を突き付けることにもなり、これまでプレイヤーが想像していた物語の展開とは完全に違う方向で種明かしが進んでいきます。

旧深山邸のステージまで来ると、化け物との追いかけっこをしながらの探索となり、かなり緊張感のあるプレイとなりますが、物語の核心部分や真実が徐々に顔を出していくこととなるので、どんどんのめりこんでいく自分を感じざるを得ませんでした。

ネタバレ全開!物語考察とテーマになった伝説を深堀解説!

それでは、ここから先は完全にネタバレを含みます。

ここからの解説は、実際にプレイして感じたこと僕なりの解釈を含みます。また、プレイ後に僕自身で調べてみて、『恐らくこうであろう』『僕はこう考える』という個人的主観を含みます。大変人気のあるタイトルが故、たくさんの考察があっていいと思いますし、僕の解釈は他の解釈を否定するものではありませんので、ご承知おきください。

それではようやくネタバレを含めて文章化できるので冒頭から少し振り返ってみます。まずは、主な登場人物です。すでに盛大にネタバレしますので、未プレイの方はご注意を

考察する上での登場人物整理

  1. 陣場湊(じんば みなと)
    • 本作の主人公であり、プレイヤーが操作する人物。父から祖母の危篤の報せを受けて祖母宅へ単身で向かう。
    • 序盤こそ回顧感が感じられるが、後半になるにつれ自身の出生の秘密にまで言及されることとなる真実に驚愕する。
  2. 陣場結(じんば ゆい)
    • 湊の母親であり、ゲーム開始時点ですでに故人
    • 深山家の人間として育ち父親の佐一とは親交が深かったが、母親の絹とは疎遠で、昔から確執があった。
    • 物語の後半で明かされる真実では、結の母親は絹ではなく、絹の姉に当たる綾乃であることが示される。
    • また、綾乃は後述の通り化け物になってしまいそこから生まれた自分の人生を悲観して結は自ら命を絶つ
  3. 陣場栄治(じんば えいじ)
    • 湊の父親。冒頭の祖母の危篤と、バッドエンドパターンのエンディングで登場する。
    • 作中では手紙という形で何度か登場するが、物語の進行上は脇役としてそれほど関与しない。
    • ただし、この作品の肝である種明かし部分について、栄治自身は一切知ることなく終わる
  4. 深山綾乃(みやま あやの)
    • ゲーム序盤で登場する遺影の女性。非常に美しく、後述の深山佐一(湊の祖父)が一目ぼれする。
    • ゲーム内のファイルで確認できる人物像としては控えめな性格であり、佐一とのやり取りの中で『蝶々は綺麗だけど、捕まえてしまうのではなく、その姿を愛でるだけでいい』という優しい心の持ち主であることが伺える。
    • また、妹である絹に対してきわめて強い依存性を示しており、佐一との結婚が決まってもなお、絹と一緒にいたいと願っていた
    • のちに化け物となってしまい、湊を追いかけまわしてくる
    • 物語の中では、結を妊娠していたということから解説の便宜上、結の生母として扱うが、婚姻関係がある相手がいないため、人のそれとは異なる
  5. 深山絹(みやま きぬ)
    • 綾乃の妹であり、湊の祖母として登場する。
    • ただし、前述のとおりの結の出生から、実際には湊と血縁関係がない。
    • 幼少期から美しい綾乃に嫉妬心を抱いており、綾乃に求婚した佐一に惚れている様子がうかがえる。
    • また、次第に綾乃に対する嫉妬はある種の憎悪へと変化し、綾乃を山に置き去りにするという行動に出る
    • 作中では、この置き去りにしたことがきっかけで、綾乃が化け物になってしまったと描かれており、絹はのちにこのことを後悔しており、実際には綾乃に対して大切に思っており唯一無二の存在として認識していたことが語られる。
    • また、危篤であるという表現でとどまっており、生死については言及されていないと思われる。
  6. 深山久兵衛(みやま きゅうべえ)
    • 綾乃、絹の父親。養蚕で財を成していた深山家を受け継いだ。
    • 手記から、絹や綾乃に対しては厳格な父親であったことが作中では語られる。
    • 綾乃の異変の後、友人でもある医師の島村に対して何とか救ってほしいと懇願しているが、失意のうちに行方不明となる。
  7. 深山佐一(みやま さいち)
    • 湊の祖父、結の父親として描かれるが、実際には血縁関係はない(前述のとおり)。
    • 綾乃に惚れ込んだ佐一だったが、ある日屋敷を訪ねると、久兵衛から深山家に婿入りして絹と結婚するなら綾乃に会わせるといわれる。
    • 最初こそ自分を認めてもらえたと喜んでいた佐一だったが、あれほど会いたくて仕方なかった綾乃は変わり果てた姿で牢屋の中で呻いていた
    • 真実を知った佐一は絹と結婚したことにして、結を育てた。
    • 序盤では『事故死』として語られた死因についても、のちに絹が故意に佐一を井戸に突き落としたということが語られる。

もうこの時点でごちゃごちゃしていますよね。整理すると、そもそも『祖母の危篤で駆け付けた』というのが湊がバスを降りた理由でしたが、『実は祖母ではない』ということがわかります。

また、佐一と絹に対して対照的な関係であったことが描かれる湊の母親の結についても『佐一も絹も本当の親ではない』ということになります。

そして、作中でずっと湊を追いかけてくる『化け物』が麗しい姿で遺影に収まっていた女性『綾乃』であるということがわかります。

そもそもゲーム冒頭から違和感が半端ない

物語を振り返る前に、このゲームいろんなところに違和感がたくさんあるんですね。僕個人が感じたいくつかを紹介します。

湊が祖母のことを『絹さん』と呼ぶ

これはもう冒頭から気になってしょうがなかったんですが、建付け上祖母として登場する絹のことを、湊は始終『絹さん』とあたかも他人のように呼称します。湊の父栄治が『さん付け』で呼ぶならまだわかりますが、普通湊からしたら『おばあちゃん』とか『ばあちゃん』って呼びますよね?これはゲームが始まってすぐにライブ配信でも触れたくらい違和感を感じました。

最終的に明かされる『絹は本当の祖母ではない』という真実を暗示していたのでしょうか。

ゲーム冒頭で示された明確な違和感

皆さんは気付きましたか?実は、ゲームのかなり序盤の段階で明らかにおかしいものがありました。それがこちらです。

※プレイ画面キャプチャーより引用

右側をよく見てほしいのですが、『夕食』と『入浴』が2回づつ記載されているのがわかります。これは絹の1日の行動予定表らしいのですが、自分の行動予定を記載しておくのであれば、夕食と入浴が2回あるのはおかしくないですか?この段階では『なんで?』という疑問符なんですが、プレイした段階では、自分の分と綾乃の分を記載していたということがわかりますよね。

結はなぜ絹のもとを訪ねて自ら命を絶ったのか

ゲーム序盤では、湊の母親結が絹と話をするために単身で絹のもとへと訪ねたことが語られます。しかし、そこで亡くなった描写はあるものの、『なぜ自殺したのか』という点についてはわからないままでした。

ゲーム後半で出てくる絹の手記を見ると、その理由がわかります。一人で訪ねてきた結に対して、絹は地下牢で隔離していた綾乃を見せ、結の母親は自分ではなく綾乃であること、化け物になってしまった姉の腹を裂いて出てきたのが結であることを伝えます。また、その出生から血を欲する性質があり、それを隠し通すために、父親ではない佐一は自分の性格が遺伝したと嘘をついていたことを結に打ち明けます。

この事実を聞かされた結は、自分の存在や信じていた家族について錯乱し、悲観して線路の中へ身を投げたのではないかと推察します。

ただ、最後のステージで出てくる『絹の遺書』には佐一、結、綾乃を自分が手にかけたということが語られます。佐一は井戸に落とされたことが途中で語られ、綾乃は毒を入れた血を飲ませたことが描写されています。

しかし、結については綾乃から生まれた真実を伝えた後『結がその後どうなったかはどうでもいい』と言っていた割に、『自分が死に追いやった』という罪悪感は感じていたことをここで読み取ることができます。また、僕自身は確認できなかったのですが、父親である『久兵衛』についても絹が殺したことを言及しています。

※プレイ画面キャプチャーより引用

物語を通して描かれる感情描写の中心的存在

さて、ここまで見てきた中で、物語の展開に重要なカギを握るのは『深山絹』であることがわかるかと思います。なぜなら、そもそも綾乃は幼少期から絹のことを大切に思っており、佐一との結婚が決まっても絹を優先する気持ちを表現しています。

佐一については綾乃を想う気持ちは揺らがず、綾乃が変わり果てた姿となってしまったことを知っても、生まれてきた結を娘として育てる決意を固めています。それは、作中で結は綾乃にそっくりであるということが何度か描かれているように、綾乃の生き写しのような結を綾乃に重ねて守っていくことが、佐一としては自分の役割だと感じたのではないかと思います。それが、佐一なりの綾乃に対する愛情の表れだったのかもしれません。

一方で、絹については綾乃を慕う反面、美しく佐一から好意を寄せられている綾乃に対して深い嫉妬心を抱いていることがわかります。

よって、僕の解釈としては、この物語の真の主人公は『深山絹』であり、彼女の哀しい物語なのではないかと考えました。そもそも絹と綾乃は幼くして母親を亡くしており、厳格で養蚕業を営んでいた父親には、プレゼントすら買い与えてもらえなかったと言及しています。

そんな環境の中で、絹にとって綾乃は憧れでもあり心の拠り所でもあり、まさに『かけがえのない存在』だったわけです。二人で過ごした日々は本当に輝かしい時間でありお互いに満足していましたが、佐一の登場によって絹の綾乃への愛情は嫉妬に侵食されていきます。綾乃を求める反面自分にはないものを手に入れるかに見える綾乃に対して嫉妬心を抱いてしまった絹は、次第に綾乃に対して嫌がらせをするようになります。これが、『山に置き去りにする』という行為の発端です。

ウツロマユの核心に迫る!物語の真相を徹底考察!

さて、嫉妬に狂った絹が犯した過ちが原因で、綾乃はのちに化け物になってしまいます。一度失いかけた綾乃の存在の大きさを再認識した絹は、父が匿った綾乃を献身的に世話しますが、化け物になってしまった綾乃の手記を見ると、『彼女』という存在に侵食されていく様子が見て取れます。

ここからは、僕自身が想像する物語の行く末と、ネットで調べた内容を紹介します。おそらく多くの人が違う考察をしている気がするのですが、一応僕としては小説も書いている身なので、その観点から『希望する物語の内容』も含めて考察していきます。

『繭姫』とは何だったのか?綾乃が語った『彼女』の正体は?

まず結論から書きますと、この物語は『愛と憎しみ』や『因果応報』がテーマなのではないかなと思いました。その理由は下記の2点です。

  • 『愛と憎しみ』という点にフォーカスを当てると全体的に辻褄が合う気がする
  • 『因果応報』という点は『繭姫』というキーワードが関連している

では、まず僕が考えた物語の全容を『愛と憎しみ』という点にフォーカスして解説してみます。

深山家は代々養蚕業で栄えていた。そこに幼くして母親を失った姉妹がおり、いつも仲良く暮らしていた。厳格な父は仕事に忙しく子供たちをかまってやることが出来なかったが、姉妹はお互いの存在が『いつもと変わらない毎日』であればそれでよかった。

年頃になった綾乃は佐一という男に好意を寄せられていた。その気持ちに気づいてはいたが、綾乃自身は絹さえいてくれればそれでよかった。自分よりも若い絹が自分に嫉妬していることは気付いていたが、それも全て受け止めていた。それほどある意味では絹のことを綾乃は愛していた。

ただ、絹にとっては『これまでと違う日々』に対して疑念と嫉妬を抱えていた。自分だけの姉だったはずが、他の誰かのものになってしまう怖さに耐えられなかった。

山に置き去りにされた日、初めて綾乃は絹に対して『憎しみ』を抱いた(これが彼女と表現されたと仮定。綾乃の中にある憎しみの感情を持つもう一人の綾乃)。しかし、絹を愛する綾乃の気持ちの方が大きかった。屋敷に帰った綾乃はいつも通り帰宅し、失いかけた綾乃に対して絹は心を入れ替えた。

ただ、綾乃は山の神の禍に触れてしまった。一人山に取り残されたあの日、心に浮かんでしまった憎悪の心が綾乃は嫌だった。山の神に絹を憎む心を取り除いてほしいと願った。神はその願いを受け入れたが、それと引き換えに綾乃に禍をかけた。

綾乃は憎しみに身を焼かれることを拒んだため、それ以外を少しづつ失った。絹を愛する気持ちを保つ代わりにその美しかった容姿はだんだんと形を変え、日の光を浴びることさえ拒んだ。それでも尚、絹を想う心が、新たな命を綾乃に宿した。それが結だった。

外見こそ醜い化け物になってしまった綾乃だったが、心はあの頃の綾乃だと信じていた絹は、最期の時まで綾乃に寄り添った。綾乃は絹のことだけは忘れたくないと願い、それ以外は失いかけていたが、年老いた絹を気遣う心は失わなかった。佐一は綾乃の生き写しのような結を、自分の愛情の証として懸命に育て上げ、秘密については隠し通した。

時は経ち、結にも息子が生まれた。成長していくにつれ自分と同じように喉が渇くという性分を持つ息子を見ながら、得体のしれない不安に結は苛まれていた。父が亡くなり暫くしたある日、絹のもとを訪ねた結は、自分の出生の秘密と、檻の中で呻く綾乃を見て絶望した。そして、自ら命を絶った。

一連の事件を経て湊が訪れた深山家では、怪物となった綾乃が徘徊し、真実を知った湊はその手で哀しい事実に終止符を打った

これが、僕が思う、ウツロマユの物語の真相です。おとぎ話的な要素もありますが、僕としては上記のような筋書きだとしたら、いろいろと納得がいくなと考えました。

皆さんの感想もぜひコメントで教えてください!

次に『因果応報』という点です。これは、プレイ後に『繭姫伝説』という言葉を検索してみたところいくつかの面白い情報が入手できたので考察の一部として紹介します。

『繭姫伝説』と検索したところ、『金色姫伝説』という言葉が出てきました。改めて『金色姫伝説』と検索してみると、かなり昔の話で逸話として残っている話が出てきました。どうやら茨城県の『つくば市』や『日立市』に伝わる伝承のようで、養蚕にかかわる神社などがあるということがわかりました。

さらに調べていくと、事の起こりがインドなどがかかわる話から由来しているようで、その話を調べていくとまさにウツロマユの物語の設定や『繭姫伝説』に通じる部分がありました。

以下抜粋です。

「昔、雄略天皇の時代(478年頃)に、天竺(インド)に旧仲国という国がありました。帝はリンエ大王といい、金色姫という娘がおりました。しかし姫の母親はなくなってしまい、リンエ大王は後添えをもらいました。後添えの皇后はきれいな金色姫を憎み、大王の留守に、金色姫を獣の多い山(獅子吼山)へ捨てたが、姫は獅子に背おわれ宮中に帰ってきた。また鷲や鷹のいる山(鷹群山)へ捨てたが鷹狩りに来た兵によってまた宮中に帰ってきました。今度は海眼山という草木のない島へ流したりしたのですが、ことごとく失敗してしまいました。そしてとうとう4度目には金色姫を庭に生き埋めにしたのです。ある日、庭から光がさして城を照らしているのに、大王が気づき、庭を掘ると、やつれた金色姫がいました。大王は継母の仕業と知り、姫の行く末を嘆き、泣く泣く桑の木で造ったうつぼ舟に乗せ、海上はるかに、舟を流し、逃がしました。舟は荒波にもまれ、風に吹かれ、流れ流れて、茨城県の豊浦に漂着しました。そこで権太夫という漁師に助けられ、その漁師夫婦により、大切に看護と世話をされていましたが、姫は病を得て亡くなってしまったのです。夫婦は不憫な姫をしのんで、清らかな唐びつを創り、姫のなきがらを納めました。それからしばらくしたある夜、夢の中に姫が現れ、「私に食物をください。後で恩返しをします。」と告げたのです。
 驚いた夫婦が唐びつを開けると、姫のなきがらは無く、たくさんの小さな虫になっていました。丸木舟が桑の木であったので、桑の葉を採って虫に与えると、虫は喜んで食べ、成長しました。ある時、この虫たちは桑を食べず、皆一せいに頭を上げ、ワナワナとしていました。
 権太夫夫妻が心配していると、その夜、また夢に姫が現れ、「心配しないでください。天竺にいるとき、継母に4たび苦しめられたので、いま休んでいるのです。」と告げました。4度目の「庭の休み」のあと、マユを造りました。マユが出来ると、筑波のほんどう仙人が現れ、マユから糸を取ることを教えてくれました。

引用元:金色姫伝説 茨城の民話WEBアーカイブ

これ、まさに『繭姫伝説』のもとになったお話じゃないでしょうか?天竺(インド)のお姫様が継母にいじめられるという点が繭姫伝説と符合し、自分の留守中に娘がいじめられてしまい、うつぼ船で大王の手によって逃がされた先で助けてくれた夫婦に養蚕の仕方を授けるという点が『因果応報』になっている気がします。

ウツロマユの物語に『因果応報』って関係なくない?って思う方もいらっしゃると思います。僕の考えを解説します!

僕が考えるウツロマユの物語の中での因果応報は以下の通りです。

  • 久兵衛
    因果:仕事が忙しく娘たちをかまってやれなかった。
    応報:気づいたら綾乃は化け物になり、最終的には絹の手によって殺された。
  • 綾乃
    因果:一時感じた憎しみの感情を神に消し去るように願った。
    応報:心はそのままでいられた代わりに、化け物になってしまった。

  • 因果:綾乃を求めるあまり嫉妬心に身を焼いた。
    応報:本来一番大切な綾乃を化け物にしてしまった。惚れたはずの佐一も殺してしまった。

また、『ウツロマユ』というタイトルや、やりこみ要素として収録されている『UFOエンド』のもとになった話も、どうやらこの辺が元ネタになっているのかなと思える情報がありました。以下、参考にしてください。

金色姫伝説|日立市公式ウェブサイト
日立市公式ウェブサイト

『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』とは何を伝える作品だったのか?

さて、いろいろな参考情報をもとに僕なりにこの作品を考察してみましたが、『結局のところ、この作品のテーマや意図したメッセージというのは何だったのか』ということを解説します。

まず、テーマは『愛と憎しみ』であり、メッセージは『本当に大切なものとは何か』ということではないかなと考えました。

結局のところ、ほとんどの登場人物が『何かを欲するあまりに、何かを失う』という境遇に陥っています。また、本来そこにあるはずの大切なものを疑いさえせずに愛していれば悲劇は起こらなかったのではないかと想像します。(唯一、湊の母親である結だけがちょっとかわいそう。ただ、母親の愛情や父親が抱える秘密を求めたがあまりに、抱えきれない真実を目の当たりにしてしまったと解釈)

そして、最後に湊は目の前の真実を受け入れることで、普段の生活に戻るようなラストが描かれています。

このような点がこの作品が多くの人に感動と感慨深さ、考察の面白さを与える理由なのではないかなと思います。

僕がこう思う理由には上記に挙げた考察も影響しているのですが、エンディングで流れるテーマソング『繭籠り』の歌詞をよく読んでみると、僕の解釈に対してもなんとなくご納得いただけるのではないかと思いますので紹介します。そもそもこれ、めっちゃいい曲です。

『繭籠り』

歌手 朝木ゆう さん
作詞・作曲・編曲 えびかれー伯爵 さん
Mix 神灼爺 さん

空を見ていた 何もない自由な空
あの蝶のように ただ飛びたかっただけ
 
何かを願い 何かを想うほどに
攫われていく 心を溶かして
その優しさで その愛しさで紡いだら
私は私でいられるのかな

夢を見ていた 無邪気で儚い夢
あの頃のように ただ笑いたかっただけ

何かを願い 何かを想うほどに
囚われていく 眩しい光に
その優しさで その愛しさで飛べたら
私は私でいられたのかな

悲しい目をしないで これで良かったの

嗚呼、何かを願い 何かを想うほどに
攫われていく 心を溶かして
その優しさで その愛しさで紡いだら
私は私になれるのかな

これ、あえて色分けしてみたのですが、下記のように読み解くと何か見えてきませんか?

  • 赤:綾乃
  • 黄:絹
  • 青:結

最初の綾乃のブロックは蝶に対するあこがれを示して、『私は私でいられるのかな』と締めくくられます。これは、化け物に変化してしまう自分を嘆いているように思います。

次の絹のブロックでは、『あの頃のようにただ笑いたかっただけ』と過去を振り返っており、優しさと愛しさがあったなら『私は私でいられたのかな』と疑問を投げかけます。

途中の綾乃のブロックは、真実を知った湊に対するメッセージとも取れますね。(ちょっと泣けます)

最後のブロックは結だとしたら、『私は私になれるのかな』と言って終わります。両親だと思っていた二人が実は違ったという真実と向き合い途方に暮れた結の心情が綴られているような気がします。また、『その優しさで その愛しさで紡いだら』という部分が綾乃のブロックとリンクするため、これが二人の親子関係を示す文脈だと考えると・・・涙腺崩壊です。

まとめ

ということで、いつもよりも長編で解説してみました。ゲーム自体としてはエンディングが複数用意されていたり、コメディチックな演出も多分に取り入れられているため、それほどシリアスな表現はされていないのですが、本筋の物語を真正面から受け止めたときの僕なりの解釈を解説しました。

僕自身書いていて思ったのですが、なんだか一つの映画を観終わった感想を書いているような気分になり、実際にゲームというよりは『ウツロマユ』という世界に引き込まれて、その中で登場人物たちの過去を追体験しているような感覚に陥りました。

とても遊び甲斐があり、とても深く考察ができ、素晴らしい物語と素晴らしいクリエイターによって生み出された『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』を解説してみましたがいかがだったでしょうか?ぜひ皆さんの感想をコメントで聞かせてください。

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