今回は『リマザード:ブロークンポーセリン』の初見プレイ後のレビューを紹介したいと思います。前回の記事でネタバレなしのゲーム概要について紹介しておりますので、そちらも参考にしていただければと思います。
今回の記事はネタバレを含みますので、ご了承の上ご覧ください。
リマザード:ブロークンポーセリンの物語上の主なトピックス(以下ネタバレあり)
ここから、少し詳細の物語と主なトピックスについて簡単に解説します。
序盤 リマザード:ブロークンポーセリン
女子学院で問題を起こしてアシュマンに引き取られたジェニファー(セレステ・フェルトン)はアシュマン・インというホテルでメイドとして働かされることになります。高慢なアシュマンとヒステリックなアンドレアの元で不遇な生活をしていました。
同様にアシュマンに引き取られた少女たちの中に友人になれる娘もいましたが、それでも閉鎖された環境である種奴隷のような生活を強いられることになります。そんなアシュマン・インでは時折遠くから奇妙な口笛や施設内のスピーカーから奇怪な雑音が聞こえることがありました。実はこれが、前作にも出てきた『催眠術』に深く関わる部分となります。
ある日ジェニファーはアンドレアが廊下に食事のトレーを置いているのを見かけます。近寄って良くみてみるとそれは食事とは思えないような汚らしいトレーでした。疑問を持ってよく調べていると、突然背後からアンドレアの激昂する声が聞こえます。みたこともないような形相で追いかけてくるアンドレアを撃退しマスターキーを手に入れたジェニファーはアンドレアが仕事をしていた部屋を調べてみると、奇妙な出来事を嘆いて神に助けを乞うようなアンドレアの手記がありました。アンドレア自身も自分の身に何か起きていることを自覚していたのでしょう。施設から出ようとラウンジへ向かったジェニファーですが、突然奇妙な兵士のようなものに襲われて階段から転落してしまいます。
場面は変わって、テレビで前作のフェルトン博士とグロリアが死亡したニュースが流れていました。そのテレビを見つめるタバコを吸う女性。リード博士でした。リード博士の手には行方不明の少女たちの資料がありました。
一方、ジェニファーが目覚めるとそこは自分の部屋で友達のリン、アンドレア、アシュマンが自分のことを心配そうに見つめています。どうやら階段で怪我をしてしまったようです。ところが、アンドレアが自分を殺そうとしたことや兵士のような人影に襲われたことなどを訴えても誰も信じてはくれません。
不審に思ったジェニファーは施設内を調べていると、アシュマンやフェルトン達が映った写真を見つけました。それ以外にも前作に出てきたロッソガッロ農場での薬物汚染の記事や行方不明の少女の情報など様々な資料がありました。そこへ『アリアナ』と名乗る女性からアシュマン宛の電話があったような留守番電話をジェニファーが再生します。その女性は『自分たちにはもう関わらないで』とアシュマンに伝えたい様子でした。運悪くそこへアシュマンが現れジェニファーはアシュマンから逃れようと部屋を出ますが、追いかけてきたアシュマンに消化器を噴射したところで記憶が途切れます。
中盤 リマザード:ブロークンポーセリン
場面はリード博士と年老いたアシュマンの会話のシーンから始まります。リード博士はアシュマンに対して過去の薬物汚染の件について質問しているようで、その中でアシュマンは集団催眠の内容について詳細をリード博士に話しています。
その話によると、集団催眠のためには『女王蜂』のように集団をコントロールする存在が必要であること、そしてセレステ・フェルトン(ジェニファー)は母親であるフェルトン博士が服用していた大量のフェノキシルによって女王蜂としての能力を持って生まれたことなどが語られました。
アシュマンに追われたジェニファーが目覚めるとアンドレアとアシュマンによって冷凍室の中に拘束されていました。なんとかして脱出を試みるジェニファーですが、バルコニーに出たところで突然誰かに引き止められます。それは同じように働かされているエリサでした。エリサは物置小屋へ行くために自分をサポートして欲しい、そのための能力がジェニファーには備わっていることを知っていると言います。ジェニファーは自覚していませんでしたが、『蛾の目』という力で、虫のように飛び回り遠くのものを見に行く能力がありました。その能力を使いエリサをサポートして物置小屋に到着すると、エリサから奇妙な話を聞かされます。
施設内で目撃した赤い修道女は『グロリア・アシュマン』であること、以前の火災で生き残った人物であること、自分たちは催眠術のループに閉じ込められておりスピーカーから聞こえてくる音に影響されること、ジェニファーには催眠術が効かないため地下研究所へ行って催眠術のループを止めてほしいということなどをジェニファーに話しました。しかし、エリサはそれをジェニファーに告げると目から血を流してその場に倒れてしまいます。
終盤 リマザード:ブロークンポーセリン
地下研究所に潜り込んだジェニファーは、ワイマンに関する記事やフェノキシルに関する記事など様々な情報を目にしました。研究所の側にあった映写室で見つけたフィルムを再生してみると、そこには自殺したとされる『ワイマン教授』が映っていました。
彼の言葉によると、修道女の一人に他の修道女を焼き殺すよう仕向けたと言います。しかし、その修道女には失明という副作用が発生しました。そしてその罪をアシュマンとフェルトンはワイマン教授になすりつけたのだと証言しています。また、集団催眠の際に寄生生物によって病気が蔓延し、その影響で支配していた人物達がワイマン教授のコントロールが効かなくなってきたと言います。火災から逃げ延びたグロリア・アシュマンが新たな主導者になるつもりなので、それを阻止しなくてはいけないとも話していました。この一件により、自分の自殺をアシュマンの助けもあり偽装したのだと語っていました。
映写室をさらに奥へ進むと施設内放送のマイクがあったので助けを呼ぼうとするジェニファーですが、突如出現したポーセリン(兵士のような怪物)に追いかけられます。命からがら逃げ延びたジェニファーはガレージでリンと落ち合いポーセリンの襲撃を受けながらもアシュマン・インからの脱出に成功します。なんとか脱出に成功し安堵する二人ですが、何者かの力によってリンは車の外へ放り出されてしまいます。リンの後を追ったジェニファーがたどり着いたのは朽ち果てた修道院跡でした。どうやらここがワイマン教授の仕向けた火災の跡地のようです。
リンを発見したジェニファーですが、何かに操られているようです。蛾の目の能力を使いそれがグロリア・アシュマンの仕業であると突き止めると、グロリアを撃退しリンをマインドコントロールから解放することができました。
時間軸が少し戻り、アシュマン・インでの出来事ですが、リンを探しているジェニファーとは対照的に周りの人たちはリンなんていないと言い張ります。おかしいと思ったジェニファーはエリサと探した物置小屋へと進みます。そして催眠をかけられているリンを発見し、その催眠を解くために映写室のフィルムを探します。
アンドレアやアシュマンに阻まれながらもホテルの映写室にてフィルムを入手し、地下研究所に戻って映写機でフィルムを再生します。しかしそこにグロリアが現れ襲い掛かろうとします。フィルムの再生をしたおかげでリンは催眠から解け、拘束されていた部屋を脱出します。
ジェニファーが再生した映写機の光によってグロリアはよろめきます。そこにアシュマンとアンドレアが登場し、アンドレアはグロリアが一連の事件の犯人なのかと問い詰めますが、アシュマンによって拳銃で撃たれてしまいます。グロリアに駆け寄ったアシュマンは全てはフェルトン一家の仕業であるとグロリアに言い聞かせます。
しかし、大量のフェノキシル投与によってグロリアが失明したことや火災の原因などについて追究するも、尚もアシュマンは保身のためグロリアに話しかけます。するとアシュマンの顔面を大量の蛾が覆い尽くしてアシュマンは目から大量出血をして倒れます。グロリアがポーセリンを操ってアシュマンの左腕を切り落としました。
ポーセリンはグロリアの支配下だと思われましたが、実はリンが支配しておりグロリアを追い詰めます。ホテルの中を逃げ回るグロリアですが、ポーセリンがグロリアを追い詰めて反撃されたポーセリンは炎に包まれる中、グロリアはこれまでの恨みを口にします。それはフェルトンの娘であるセレステ(ジェニファー)に向けられた言葉でした。
場面が変わり、リード博士とアシュマンの会話のシーンになります。リード博士はアシュマンに拳銃を向けており、アシュマンは殺してくれと懇願しています。リード博士は、集団催眠の主導者の能力を持つジェニファーを見つけ出すために、他に何人の少女を連れ去ったんだとアシュマンを問い詰めます。アシュマンは『14人だ』と答えます。リード博士は拘束したアシュマンから銃口を降ろして車の中に閉じ込めます。それは、自分たちの苦しみ以上に生きる苦しみを味合わせるためでした。アシュマンが悲鳴を上げる車を後にしてリード博士はその場を去ります。
グロリアから逃げたリンとジェニファーですが、二人はそれぞれ別の道を歩むことになり別れのシーンとなります。間も無く発車を迎える電車のホームで、二人は必ずいつか再会しようと約束します。そして、二人で憧れた音楽コンテストに出ようと誓い合います。再会の日までリンの大切なバイオリンはジェニファーに持っているよう伝え、再会した時に返して欲しいと伝えます。
エンディング リマザード:ブロークンポーセリン
老婆が誰かと話していました。
実は前作のオープニングやエンディングでも登場したこの老婆ですが、ジェニファー(セレステ・フェルトン)だったのです。今作ではどうやらワイマンやアシュマンによって誘拐された14人の少女の弟の男性から事件の成り行きや詳細について尋ねられ答えているようでした。
男性は、ジェニファーの生い立ちから知り得ない事実もあるのではと問いただすと、ジェニファーは1年前にリン(リード博士)と再会したから知っているんだと答えます。ジェニファーとリンはこの会話の1年前に再会しており、それは衰弱したリンがジェニファーに会いたいと願ったため、関係者から連絡を受けてジェニファーが会いに行ったのでした。
年老いたジェニファーが目にしたのは呆然と遠くを見つめるリンでした。リンはアルツハイマー病に侵されていたのです。おそらくこれもアシュマン達のフェノキシル乱用による弊害ではないかと思われます。ジェニファーとリンが再会できた翌日、リンはこの世を去りました。
年老いたジェニファーは男性にこう続けます。
リンと交わした約束は守れなかった。実家に戻ったもののグロリアがすでに潜入しており、逃げるしかなかったと。その後リンと連絡を取ることはなかったが、自分が安全であると彼女が知っていればよかったと。
『リンが何度も約束した劇場に足を運んでいることを知っていた。いつかジェニファーの記憶が戻ることを願って。そして、いつの日も、彼女は自分のピアノの側で再会することを望んでいたんだ』と話して、この壮大な物語は感動と驚愕のラストにて幕を閉じます。
リマザード 2部作として見た時の伏線の回収と種明かし
リマザードシリーズは前作の『トーメンテッド・ファーザーズ』と今作の『ブロークンポーセリン』のニコイチにて物語が描かれています。前作では言及されなかった部分が今作で明らかになっている部分もありますので、僕が特に印象に残ったトピックスを紹介します。
リマザード:ブロークンポーセリンで語られる全ての発端はロッソガッロ農場の薬物汚染
前作でも描かれたロッソガッロ農場の薬物汚染ですが、この弊害とフェルトン博士の薬物中毒は独立した事象であるということがわかりました。前作ではその辺はっきりしなかったのですが、フェルトン博士については父親が戦場から戻った時に、戦場で服用していた精神安定剤の影響でおかしくなっており、本来女性であるフェルトンに対して男性として生きることを強要していました。その結果、薬物の影響もあり精神分裂症になってしまったというわけです。また、本作で登場するジェニファー(セレステ・フェルトン)はフェルトン博士の娘であり、生物学上の父親はアシュマンですが、フェルトン博士が大量の薬を服用していたことで、セレステに集団催眠を主導する力が備わったという流れのようです。
そもそもの発端は、ワイマン教授、アシュマン、フェルトン博士が関わったロッソガッロ農場での人体実験が失敗し、そこで働いていた修道女達に甚大な健康被害がもたらされました。それを隠すためにある修道女(のちにリンと判明)に命じて火災を起こさせて、修道院ごと焼き払おうとした。その火災から生き残って失明を患ったのがグロリアだったということでした。
本来はワイマン教授が集団催眠の主導者だったものが、グロリアが集団催眠の主導者として事件を起こしていたため、それを止めようと生まれながらに主導者の能力を持っているジェニファー(セレステ・フェルトン)を見つけ出そうとアシュマン・インに14人もの少女達を誘拐していたということのようです。
ジェニファー(セレステ・フェルトン)の父親がアシュマン
前項でも触れましたが、本作の主人公であるジェニファーは、前作に登場するフェルトン博士(生物学的には女性)と今作で登場するアシュマンの間に生まれた子供です。ゲームをプレイしているだけの見た目で言うとちょっと気持ち悪い話なのですが、どうやらアシュマンの恋人だった『アリアナ』という女性をフェルトンに奪われたと思ったアシュマンが腹いせにフェルトンの秘密を暴くため強姦したというのが経緯のようです。
前作の映写機のある部屋で机の上にフェルトンを犯してやったというようなメモ書きがあったような気がするので、これは上記のことを示唆した情報だったのでしょう。
ということは、もしフェルトン博士が生涯独身のままでいたとしたら本作のジェニファー(セレステ・フェルトン)は生まれなかったことになります。なんとも数奇な運命というか哀しいお話です。
『リマザード:トーメンテッドファーザーズ』ラストのリード博士の涙の意味
前作をプレイしていて一番引っかかったのが、グロリアを倒してリード博士が会話するシーンです。あの時に、グロリアが『世界の頂点』という言葉とともにピアノの鍵盤をリード博士(本作のリン)に手渡します。リード博士は秘密の部屋(セレステの部屋)に向かい迷うことなくピアノのふたを開けるとそこから大きなバッグを取り出します。バッグについていたキーホルダーには『さよなら』という言葉が刻まれていましたが、それを見たリード博士は涙を流します。
これが全く分かりませんでした。次回作につながるんだろうなくらいは思いましたが、前作の中では一切語られなかったシーンです。
それが、今作をプレイして、最後の最後でリンとジェニファーが再会を約束して駅で別れた時のシーンに関連するということを知った時マジで鳥肌が立ちました。リンが大切にしていたバイオリンを受け取ったジェニファーはバッグの中にしまっていて、それが前作の最後に出てきた大きなバッグだったのです。
前作のラストでリード博士(リン)がすべての記憶を取り戻していたのかは定かではありませんが、ジェニファーに預けたバイオリンを見つけて、ジェニファーも自分がここに来るだろうということを察して置いていったことを鑑み涙を流したのではないでしょうか。
老婆の回想が一番鳥肌が立ったリマザード:ブロークンポーセリン
前作の『トーメンテッドファーザーズ』では、オープニングとエンディングで老婆が誰かと話しているシーンが採用されていました。僕はてっきりこの老婆はリード博士(今作のリン)であり、昔の出来事を思い出して真相を話している、それがゲームとして語られるものだと思っていました。『トーメンテッドファーザーズ』をプレイし終わった後も、今作をプレイしている最中もそれはずっと思っていました。
ところが、今作の最後で語られた事実として、この老婆はジェニファーだったということです。
そして、リード博士(今作のリン)については、1年前にアルツハイマー病を患いなくなっているということが語られています。
老婆がジェニファーであるということを念頭に置いて前作から振り返ってみると、実は前作でも今作でも、物語のセンターに来る人物はジェニファーだった(セレステ・フェルトン)だったということでしょう。前作では本当に実在するのかすら明示されなかったジェニファーですが、実はすべての中心にいる人物だったということが分かった瞬間物語の奥深さ、構成のすばらしさに震えました。
また、最後の言葉で『リンは常に自分のピアノの傍で再開できることを望んでいた』というセリフを聞いた時には驚愕と感動の震えが止まりませんでした。なぜかというと、リマザードは悪の組織の悪事を暴いていく物語のように見えますが、実は単純に二人の少女の友情のお話だったということだと思うんです。引き裂かれてしまった運命に対して、再会したいという希望がなかなか叶わず、ようやく再会できた時には悲しい過去の影響でまた別れを迎えることになった。そう考えると、とても切なく、胸が締め付けられる想いでいっぱいになりますね。
まとめ
いかがだったでしょうか。ゲームとしてももちろんですが、小説やドラマにしてもいいくらい本当に良く作られた物語だったと思います。プレイし始めた時はこのゲームが多くの賞を受賞している意味は分からなかったのですが、2部作をプレイし終わってその理由が本当の意味で分かりました。
ぜひこれからプレイする方も、2部作続けてプレしていただくことをおすすめします。物語の深さにきっと感動していただけること間違いなしだと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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